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鳥取家庭裁判所 昭和35年(家)39号 審判 1960年3月31日

申立人 萩野一夫(仮名)

相手方 藤田節子(仮名) 外三名

主文

被相続人萩野一政の遺産を次のように分割する。

申立人の取得分を別表記載のとおりとし、相手方等の取得分はないものとする。

理由

第一  件外萩野一政は、昭和二十六年三月○○日、鳥取県八頭郡智頭町大字三田○○○番地で死亡し、同日、上記件外人を被相続人とし、その一親等直系卑属である申立人及び相手方等を共同相続人とする遺産相続が開始したことは、記録編綴の戸籍謄本より明らかである。

第二  調査の結果によれば、本件相続財産の範囲が別表のとおりであることが認められる。

第三  而して、相手方萩野実を除く共同相続人の間において、上記遺産の分割について既に協議がなされその結果別表記載の遺産全部を申立人の取得分とし、相手方萩野実を除く相手方等の取得分はないものとする旨の合意が成立したこと。但し、相手方萩野実は昭和十九年から同二十九年に亘つて窃盗五犯を累行し服役出所後昭和三十一年頃から所在不明となつたため上記協議に加つていないことは調査の結果明白である。

第四  しかしながら、調査の結果によれば、相手方萩野実は行方不明になるに先き立ち、昭和二十八年頃申立人に対し、「自分は肩身が狭いから遺産相続しないで郷里を出て独立したいので生計資金として一万円欲しい」旨の申出をし、申立人から一万円の給付を受けて、昭和二十八年四月二〇日鳥取県給産会主幹の立会のもとに相続分を放棄する趣旨の誓約書をとり交していたことが認められる。

第五  上記の事実を審按すると、共同相続人の間に民法第九〇七条所定の有効な協議があつたものとはなし難く、協議をすることができないときに該当するものと解され、審判により分割すべきことになるところ、上記認定の事情にかんがみると、相手方等はすべて相続分の取得を望まない真意であることが明らかに認められるので、上記法条における審判の協議に対する補充性の趣旨に則り、主文のように分割することとする。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 深谷真也)

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